インフルエンザ関連の銘柄

はじめに

2017/2018シーズンのインフルエンザの流行は過ぎ去りつつあります.その年によってピークは異なりますが,11月中旬から流行が始まり,3月頃には収まります.そんな微妙タイミングですが,塩野義製薬のインフルエンザ治療薬の承認に関するニュースがありましたので,インフルエンザ治療薬とその特徴などについて紹介します.


インフルエンザウイルス感染から発症まで

以下の3段階にわけられ,3段階目の「細胞への放出」を防ぐことでインフルエンザ症状を抑える薬剤がこれまで使用されてきました.1段階目と2段階目を防ぐことでもインフルエンザ症状を抑えることが期待されていましたが,そのような薬剤を作ること自体が技術的に難しかったため,各社ともに3段階目をターゲットとしたわけです.

  1. 感染・細胞内へ侵入(インフルエンザウイルスが患者の細胞に結合し、細胞内に侵入し、膜融合することで細胞内にウイルスの本体である遺伝子RNAを挿入する)
  2. 細胞内での増殖
  3. 細胞外へ放出

各薬剤の作用機序

  1. 感染・細胞内へ侵入 ← PD-001
  2. 細胞内での増殖 ←ゾフルーザ
  3. 細胞外へ放出 ← リレンザ,タミフル,イナビル,ラピアクタ(発売順)

3段階目をターゲットとした薬剤が4つでもっとも多いですね.ニュース等で良く耳にするのは中外製薬のタミフルでしょうか.あまり知られていませんが,第一三共のイナビル売上が一番です(2014年度から2017年度まで4年連続).

さて,2段階目をターゲットとした薬剤は塩野義製薬のゾフルーザのみです(2018年3月3日現在).この薬剤はRocheから導入した薬剤です.ちなみにタミフルを創生したのもRocheです.

3段階目をターゲットにした薬剤は,ペプチドリームがPDPSの技術を使って見つけた特殊ペプチドです.現在は,研究段階にありますので,近い将来,販売されるかもしれませんね.

塩野義のゾフルーザってそんなにすごいの?

先駆け審査指定制度*の対象になっていました.新規作用機序であり,世界に先駆けて日本で発売するという条件をクリアできていたので対象になっています(このほかにも条件があります).

*有望な薬を早く実用化するために優先的に審査する制度であり,通常1年程度かかる審査を半分の6ヶ月程度に短縮している.

報道内容をまとめてみると以下の通り.

  1. 1回の服薬で治療が完了するため,1日2回,5日間飲み続けるタミフルなどと比べて使いやすい
  2. 塩野義製薬によると,既存薬よりも他人にウイルスを感染させるリスクを減らせると期待される
  3. 既存薬が効かない耐性ウイルスが流行した時に,ゾフルーザは効果を発揮しそう

1点目について考察してみましょう.

 ゾフルーザタミフルリレンザイナビルラピアクタ
塩野義製薬中外製薬GSK第一三共塩野義製薬
投与方法経口経口吸入吸入点滴
投与回数1回2回 x 5日間2回 x 5日間1回1回
予防適用XX

投与回数は,タミフルより優れていますね.イナビル,ラピアクタと同等と考えて良いでしょう.

投与方法は,一概には言えませんので多角的に見る必要があります.とりあえず,吸入タイプのリレンザとイナビルより少し優れているでしょうか.点滴のラピアクタよりは優れていると言ってよいでしょう.ただし,錠剤だと小さいお子さんは飲むのが大変ですね.吸入だと小さいお子さんや高齢者は使用できませんね.耳鼻科などで使用されているネブライザーであれば,この問題を解決できます.第一三共のパイプラインをみて見るとPhase 3にイナビルのネブライザーがあるので,近い将来に発売されるかもしれませんね.

同じ表に入れるべきか迷いましたが,ここで注目なのが予防適用の有無です.タミフルとイナビルはインフルエンザの予防にも使用できるんですね!

次に,2点目について考察してみます.

「塩野義製薬によると」っていう表現がいやらしいですよね.メーカーが勝手に主張しているだけで,厚生労働省は認めていませんてことです(審査報告書を見ればわかります).感染リスクを評価する試験は実施していないので,このような主張をメーカーからするべきではないと思います.医薬品の広告の在り方が騒がれる昨今ですので,気をつけるべきですね.

インフルエンザ罹病時間(イメージ的には症状がでている期間)は,タミフルと同程度の長さ,ウイルス消失までの時間は,ゾフルーザ24.0時間,タミフル72.0時間なので,ゾフルーザの方がかなり早く消失しています(作用機序を考えれば当然の結果がでたということですね).ここで重要なのは「患者さんが実感できるほどの効果の違いは認められていない」ということです.ウイルスの消失が早まっても辛い症状が早く治らないと意味ないですよね.

作用機序から考えると,ウイルスの細胞内増殖を抑制するゾフルーザよりも細胞外への放出を防ぐタミフルなどの方が感染リスクは低いと予想されます.あくまで予想です.科学的な興味から言えば,ゾフルーザ,タミフル,イナビルの3剤で比較試験を実施して欲しいですね(現実的ではありませんよ).

インフルエンザに罹ると1週間くらいは学校や会社に行ってはいけないルールになっていますよね.これは,1週間でウイルスが排除されて自然治癒するからです.ゾフルーザで治療することで完全にウイルスを消失できるのであれば,より早く社会復帰できますよね.これは患者自身にも社会にもメリットがあります.しかしながら,このことを検証するのは大変です.更に,ウイルス消失時間が24時間と報告されているのは,早い人から順にならべて真ん中の人が24時間だったということなので,遅い人は,もっと時間がかかっているんです.これでは,いつから社会復帰していいか明確に主張できませんよね.

最後に3点目です.

パンデミックに対する処置としては,異なる構造の薬剤,異なる作用機序の薬剤があることは良いことです.実際にタミフルの耐性ウイルスが見つかっています(イナビルを含むその他の薬剤では見つかっていないと記憶しています).

Celeryのひとりごと

報道ではタミフルのみと比較することが多いので,ゾフルーザが絶対的に優れているように見えますが,イナビルと比較すると必ずしもそうではない部分もあります.

これは報道の姿勢に問題があるのかもしれません.名前が良く知られているというだけで部分的なタミフルとの比較に基づいて主張しています.

インフルエンザ治療薬と異常行動も世間を騒がせていますが,その関連は認められていません.報道では,「タミフルを服用してXX名が異常行動を起こした」などと伝えられていますが,これではタミフルの服用が原因なのかわかりません.

某新聞では「厚労省の副作用報告によると,昨シーズンにインフル治療薬を服用した患者のうち,飛び降りや転落につながる異常行動がタミフルで38件,リレンザで11件,イナビルで5件の計54件あったことが報告された」と報道しています(全体例数なし,割合なし,比較なし).こんな報道したら「インフルエンザ薬は危険なもの」,「製薬会社は悪者」という考えが植えつけられてしまいそうですよね.

実際には,インフルエンザ治療薬を飲んでいない集団での異常行動と比較しないとインフルエンザ治療薬が原因であるかはわからないです.以下の表は,厚生労働省が発表しているタミフルと異常行動の関連を調査した結果です.これを見ると.タミフルを飲んでいない人でも異常行動が認められていて,発現率に大きな差はありません.なお,インフルエンザに罹ると高熱を出しますので,それによって異常行動に繋がると推察されます.

 異常行動割合異常行動全体
タミフル投与11%840例7438例
タミフル未投与13%286例2228例


インフルエンザの症状(おまけ)

  • 高熱(38℃以上の発熱)
  • 体の節々の痛み(関節痛,筋肉痛)
  • 倦怠感 (だるさ,悪寒,寒気)
  • 頭痛
  • 吐き気
  • のどの痛み
  • 咳,痰,くしゃみ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加