ペプチドリーム由来のBMS-986189

BMS-986189 とは?

ペプチドリーム由来の PD-L1 をターゲットとした特殊ペプチド薬剤で,Bristol-Myers Squibb が開発を進めています.

PD-L1 をターゲットとした抗体は,既に市場にありますが,全て抗がん剤として承認されています.抗体医薬品は一般に製造コストが高いというデメリットがありますが,特殊ペプチドはこの課題を解決できます.

BMS-986189 は,抗がん剤としてではなく,重度敗血症の治療薬として開発が始まっています.ClinicalTrials.gov* に登録されている情報(NCT02739373)によると,以下のことがわかります.

  • FIH study(ヒトにおける最初の臨床試験)の対象は,健康成人
  • この試験の目的は,BMS-986189 を単回投与した時の忍容性と安全性を調べること
  • 対象疾患は,重度敗血症

*米国国立公衆衛生研究所 (NIH) と米国医薬食品局 (FDA) が共同で,米国国立医学図書館 (NLM) を通じて,臨床試験に関する情報を提供しているデータベースです

BMS-986189 に対する投資家の期待

一部の投資家は,PD-L1 を対象としているという情報から,BMS-986189 が抗がん剤として開発されるのではないかと考えているようです.今後,抗がん剤として開発する可能性はゼロではありませんが,私は公開されている情報の通り,敗血症の治療薬として開発されると考えています.

BMS-986189 と敗血症治療

PD-L1 をターゲットとした BMS-986189 が抗がん剤としてではなく,敗血症として開発されると考えた根拠は以下のとおりです.

  • vitro の実験では,PD-1 経路を抑制することによって,敗血症患者の血中のアポトーシスを抑制させ,予後を改善する可能性があると報告されている [1].
  • 敗血症の患者においても PD-1 高発現が予後予測因子であると報告されている [2, 3].

最後に

巷では様々な憶測がありますが,私は BMS が公開している情報をそのまま受け取ります.抗がん剤であろうがなかろうが,特殊ペプチドの可能性は無限大だと信じています!

References

  1. Chang, Katherine, et al. “Targeting the programmed cell death 1: programmed cell death ligand 1 pathway reverses T cell exhaustion in patients with sepsis.” Critical care 18.1 (2014): R3.
  2. Guignant, Caroline, et al. “Programmed death-1 levels correlate with increased mortality, nosocomial infection and immune dysfunctions in septic shock patients.” Critical care 15.2 (2011): R99.
  3. Zhang, Yan, et al. “Upregulation of programmed death-1 on T cells and programmed death ligand-1 on monocytes in septic shock patients.” Critical care 15.1 (2011): R70.

2018年 5月 1日追記

BMS-986189 というキーワードで検索したところ,Applied Pharmaceutical Chemistry 2018 (APC2018) のプログラムをネットで見つけました.

以下,APC2018 のプログラムの抜粋です.

ここでは,BMS-986189 という品目番号はでてきませんが,macrocyclic peptide (大環状ペプチド)のディスカバリーについて記載されています.

また,PD-L1 阻害剤であることは記載されていますが,ターゲットとなる疾患は明記されていません.

Discovery of a Macrocyclic Peptide Inhibitor of Programmed Death-Ligand 1 (PD-L1)

Paul Scola, Bristol-Myers Squibb

Macrocyclic peptides were identified as inhibitors of PD-L1 through mRNA display, an in vitro selection technique. These screening leads demonstrated modest in vitro activity in PDL1 binding assays. Co-crystal structures of selected analogues with PD-L1 provided insight into the nonbonding interactions between these macrocyclic peptides and the PD-L1 protein. The structure-based insights gleaned enabled the rapid optimization of these macrocycles with respect to PD-L1 inhibitory activity and the mitigation of off-target liabilities identified in early leads. This rational drug design approach led to the discovery of a macrocyclic peptide with activity in binding and functional assays comparable to a PD-L1 antibody. Details of these discoveries will be discussed.

次に,APC2018のプログラム後半にでてくる発表者の紹介文を以下に示します.

赤字の記載に注目してください.Paul さんという BMS の研究者の方ですが,Immuno-Oncology チームのリードをしており,その代表的な成果が BMS-986189 のディスカバリーとのことです.

別の学会でも同じような発表をされていたので,ペプチドリームの技術で生まれた BMS-986189 を高く評価していることが伺えます!

近いうちに患者対象の試験が開始されるかもしれません.

最近では,複数の PD-1/PD-L1 抗体が承認されていますが,中分子の PD-L1 阻害剤ということであれば先行品との差別化がしやすいと思います.

Paul Scola, PhD, Bristol-Myers Squibb: Dr. Scola received his Ph.D. in organic chemistry from The Pennsylvania State University where he conducted researched under the guidance of Professor Steven Weinreb. He then assumed a postdoctoral position at Harvard University under the tutelage of Professor Yoshito Kishi. Paul joined Bristol-Myers Squibb in 1992, where he is currently a Director in the department of Discovery Chemistry and Molecular Technologies. The focus of Paul’s research efforts include the discovery of small molecule antiviral agents for the treatment of hepatitis C virus (HCV) infection. As part of that effort, Paul had the privilege of co-chairing the HCV NS3 protease inhibitor team which discovered BMS-650032 (asunaprevir), an approved treatment for HCV that is administered as a dual cocktail with BMS’ daclatasvir. More recently, Paul has co-led full phase discovery teams in Immuno-Oncology. An important outcome of the team’s effort, was the discovery of BMS-986189, a macrocyclic peptide that is a potent inhibitor of PD-L1 and has progressed to the clinical stage.

BMS-986189 について最初に考察した際は,敗血症治療薬として開発するものだと思っていましたが,APC2018 のプログラムを踏まえると抗がん剤として開発するのかもしれません.もちろん安全性が高いようなので両方のインディケーションで開発を進める可能性を否定できません.

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