ITK-1: テイラーメード型がんペプチドワクチン

はじめに

ITK-1はBrightPathが開発中のテイラーメード型がんペプチドワクチンです.

BrightPathについては,こちらの記事にまとめてありますのでご覧ください.

この記事では,前立腺癌を対象とした開発に的をしぼって紹介します.

客観的に言えることを書きましたが,ネガティブな部分が多いです.本来は,まとめとして最後に書く内容ですが,ここで記載しておきます.次回はGRN-1201などについてまとめたいと思います.

  • 前立腺癌を対象としたランダム化比較試験のデータがないので,ITK-1のPhase 3はギャンブルです.
  • BrightPathをポートフォリオに含めていますが,ITK-1には期待していません.
  • ITK-1が成功したらラッキーぐらいに思っています.
  • 世界初のテーラーメードがんペプチドワクチンとして承認される可能性がゼロではないので,ITK-1の成功を見込んだ投資にも魅力はあります,
  • GRN-1201などに期待しましょう!

ITK-1

ITK-1は,既存治療(ドセタキセル)が効かなくなったHLA-A24陽性の去勢抵抗性前立腺癌を対象として,医薬品開発の最終段階にあたるPhase 3試験を実施中です.既に被験者の登録は完了しており,現在はイベント(死亡)集積のための追跡期間中です.Phase 3の内容については,後述します.

ITK-1は投与前に免疫応答検査を実施します.そして,患者ごとに免疫反応しやすいペプチドを12種類の中から最大で4つ選択して投与します.患者ごとに異なるペプチドを投与するので,テイラーメード型とされています!

引用:http://pdf.irpocket.com/C4594/PoNw/c3uL/oiR7.pdf

これまでにも複数のペプチドワクチンを混ぜたカクテルワクチンなどが開発されてきましたが,全て失敗に終わっています.患者背景に関わらず,同一の治療を行なっていたことが失敗要因の一つと言われています.この点を解決したのがITK-1です.

ITK-1 Phase 1 [1]

Phase 3開始前に実施された治験を確認してみると,前立腺癌患者を対象とした試験に限定した場合,Phase 1の1本のみです.バイオベンチャーには良くあることですが...試験結果のポイントをまとめてみました.

  • HLA-A24陽性の前立腺癌患者対象
  • 15名が登録
  • 重篤な副作用はなし
  • 最も頻度の高かった有害事象は,Grade 2の注射部位反応
  • MTDに到達せず
  • 12名が継続投与試験に参加
  • 生存時間の中央値は23.8ヶ月

生存時間の解釈ですが,同一試験内で他剤やプラセボと比較したわけではないので,長いとも短いとも言えません.ドセタキセルの生存時間の中央値19.2ヶ月 [2] と並べた図がBrightPathから公表されていますが,対象患者が異なるため何とも言えません.生存時間の推定精度の観点から言えば,ドセタキセルの結果は被験者数が多いので推定精度がある程度保たれていますが,ITK-1 Phase 1は15名の結果なので,推定精度は低いです.めちゃめちゃ低いです.Phase 3でこの結果が再現されたら,偶然というレベルです.

もし仮に,この試験で得られた値が確かなものだったとしても,ITK-1を投与した結果として生存時間が延長したのかどうかはわかりません.HLA-A24陽性患者のみを対象としている点に留意する必要があります.例えば,ITK-1投与の有無に関わらず,HLA-A24陽性患者の生存時間の方が,陰性患者よりも長かったとすると,ITK-1投与の効果ではなく,予後が長い患者を集めた結果,23.8ヶ月というデータが得られたことになります.HLA-A24が予後因子かどうかについては,文献データはないようです.通常であれば,プラセボ対照の無作為化Phase 2試験を実施して,ITK-1の有効性を評価するところですが,そうはしなかったんですね.いきなりPhase 3です.まさにギャンブルですね.

ITK-1 Phase 3

Phase 3試験では,HLA-A24陽性患者にITK-1かプラセボを投与して,ITK-1投与群とプラセボ投与群の生存時間を比較します.目標被験者数は333名です.以下の2条件が揃えば,プラセボとの比較なので十分な検出力が保たれているはずです.つまり,設定した条件のもとで,生存時間の延長を示す確率が高いはずです(正確には,対立仮説の元で十分な検出力が保たれているはずです).ただ,前述の通り,この2つの条件が揃うかはギャンブルの域です.BrightPathはリスクを許容してPhase 3に進んだわけです.人によってはワクワクするのではないでしょうか.

  • HLA-A24陽性被験者の生存時間が陰性被験者と比較して極端に長くなかった
  • Phase 1の結果を偶然にも再現できた

結果の公表時期について気になるところです.

2018年度中にキーオープンを実施する予定であることが公表されています.投資家向けの掲示板では,2018年3月にキーオープン予定と記載されている方が見受けられますが,おそらく勘違いでしょう.2018年3月は治験の終了予定というだけであって,キーオープンを3月に実施するわけではないと思います.最終観察の完了後は,症例報告書のデータのSDV,データクリーニング,キーオープン,TLRという流れです(通常,キーオープンとTLRは同日から数日以内です).2018年3月末に最終観察が完了した場合,結果の公表は5月から7月頃でしょうか.なお,この辺りの工数は企業ごとに異なるので正確には予測できません.

References

[1] Noguchi, M., Uemura, H., Naito, S., Akaza, H., Yamada, A., and Itoh, K. (2011). A phase I study of personalized peptide vaccination using 14 kinds of vaccine in combination with low‐dose estramustine in HLA‐A24‐positive patients with castration‐resistant prostate cancer. The Prostate71(5), 470-479.

[2] Berthold, D. R., Pond, G. R., Soban, F., de Wit, R., Eisenberger, M., and Tannock, I. F. (2008). Docetaxel plus prednisone or mitoxantrone plus prednisone for advanced prostate cancer: updated survival in the TAX 327 study. Journal of Clinical Oncology26(2), 242-245.

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