ITK-1 Phase 3試験の例数設定と解析方法

ITK-1って?

ITK-1はBrightPathが開発を進めているテイラーメード型がんペプチドワクチンです.BrightPathについては,こちらで簡単にまとめています.また,ITK-1については,こちらで一度まとめてあります.

この記事では,ITK-1 Phase 3試験の例数設計と解析方法についてまとめます!

ITK-1 Phase 3試験の例数設計

生存時間 (OS) を比較する臨床試験では,多くの場合,以下の値を設定することで被験者数が求められます.

  • 2群のMedian OS(Median OSの説明は後ほど)
  • 登録期間:最初の被験者の登録から最後の被験者の登録までの期間)
  • 追跡期間:最後の被験者の登録から試験終了までの期間)
  • 有意水準:両側5%(希少疾患や探索的な試験の場合,両側10%のこともある)
  • 検出力:80% or 90%(設定した条件 [正確には対立仮説] のもとで有意になる確率)

2群のMedian OS

ITK-1を用いた治験はPhase 1試験1本のみです.つまり,この試験の結果からITK-1群の全生存期間(OS)を見積もる必要があります.Phase 1試験で得られたMedian OSは,23.8ヶ月でした.15例の結果なので,この値がPhase 3で再現されるかはわかりません.

参考データとして,久留米大学が実施した臨床研究では,Median OSが22.0ヶ月でした.再現性が取れているかもしれませんが,こちらも12例の結果なので,OSの推定精度は高くありません.

ITK-1のMedian OSは,少し保守的に20.0ヶ月と設定してみましょう.

ITK-1 Phase 3で対象となるのは,ドセタキセルが効かなくなった集団です.また,ITK-1の対照群は,プラセボです.つまり,ドセタキセル無効集団のプラセボ投与時のMedian OSが必要になります.

BrightPathが実施した試験で,ドセタキセル無効集団にプラセボを投与したものはありません.多少,患者背景などが異なりますが,ここでは久留米大学が実施した臨床研究の論文に提示されているヒストリカルデータ(Noguchi et al., 2012)を参考にします.この論文では,「ドセタキセルによる治療で増悪(PD)してから,死亡するまでの時間」を提示しています.その値は,10.5ヶ月です(n=17).

同時比較によるデータではなく,ヒストリカルデータであり,更には対象集団も異なるため,保守的に15ヶ月と設定してみましょう.

登録期間と追跡期間

試験期間ですが,JAPICに登録されている情報(JapicCTI-132199)から,2013年8月 ~ 2018年3月ということがわかります.

また,BrightPath (当時,GreenPeptide) からのニュースリリースによると,2016年4月に症例登録が完了していることがわかります.

この2つの情報から,登録期間2年8ヶ月 (32ヶ月),追跡期間1年11ヶ月(23ヶ月)と推測されます.

必要被験者数は?

これまで検討した通り,以下の値を用いて必要被験者数を実際に計算してみました.検定方法は,一般的に用いられるログランク検定です.

  • Median OS:ITK-1=20.0ヶ月, Placebo=15.0ヶ月
  • 登録期間:2年8ヶ月 (32ヶ月)
  • 追跡期間:1年11ヶ月(23ヶ月)
  • 有意水準:両側5%
  • 検出力:80% or 90%

必要被験者数は,検出力80%で492名,検出力90%では658名です.

実際の目標被験者数は333名ですので,各群のMedian OSの設定が少し緩めのようです.検出力90%で,各群のMedian OSを21ヶ月,14ヶ月とした場合,必要被験者数はおよそ333名になります.実際の設定はこの程度だと推察されます.このMedian OSが再現されれば,確実に有意差がつきます.

ITK-1 Phase 3は成功するの?

設定どおりのデータ,もしくは少し劣るデータが得られれば有意差が付きます.ただし,Phase 3のデザインに用いられているデータ(主に,median OS)の信頼性があまり高くないので,その点が心配です.これまで同時比較のデータがなく,HLA-A24が予後に与える影響も明らかになっていませんので,成功確率が高いとは言えません.

おまけ:SNSで多く見受けられる誤った解釈

Median OSを比較しているわけではない?

会社からの資料や論文では,median OSが提示されていることが一般的です.しかしながら,生存時間の比較では,median OSを比較しているわけではありません.

2群の生存時間を比較する検証試験では,多くの場合,ログランク検定が用いられます.ログランク検定は,生存曲線全体を比較する検定手法です.

そのため,median OSでどんなに差が開いていようとも,それ以外の場所で生存曲線がクロスしていたりすると有意差がつきません.

下図は2群(Treated, Control)の生存曲線をプロットしたもので,縦軸は生存率(%),横軸は生存時間(日)です.

試験開始時(生存時間=0)では,死亡している人がいないため,生存率100%ですが,時間の経過とともに死亡数が増え,生存率が低下していきます.

そして,生存率50%となった時点がmedian OSです!

Treated群のmedian OSは75日,Control群はmedian OSに達していません(125日より長い).

参考文献

Noguchi, Masanori, et al. “Phase II study of personalized peptide vaccination for castration‐resistant prostate cancer patients who failed in docetaxel‐based chemotherapy.” The Prostate 72.8 (2012): 834-845.

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