ITK-1に続く個別化ペプチドワクチン(備忘録)

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BrightPathのパイプラインにITK-1という個別化ペプチドワクチンがありますが,この医薬品の生みの親は久留米大学のがんワクチンセンターです.

久留米大のペプチドワクチン候補

久留米大学が保有するペプチドワクチンは,全39種類あり,その内訳は,以下の通りです.

  • HLA-A2ワクチン候補:12種類
  • HAL-A24ワクチン候補:14種類
  • HLA-A3sワクチン候補:9種類
  • HLA-A26ワクチン候補:4種類

久留米大学が実施してきた臨床研究では,患者の状態に合わせて,この候補から4種類を選択して投与しました.

4種のペプチドワクチンはどうやって選ぶの?

下の図は,久留米大学がんワクチンセンターのホームページから引用したものです.1番上の段には,久留米大学が保有する39種類のペプチドワクチンがあります.2段目には,4名の患者さんと各患者さんが反応を示したHLA抗体が示されています.一番左の患者さんは,HLA-A2が陽性であったため,HLA-A2ワクチン候補12種類から4種類を選択して投与します.この4種類は,抗体陽性反応の高い順に選ばれます.HLA-A24陽性患者であれば,HLA-A24ワクチン候補14種類から,抗体陽性反応の高い4種類が投与されます.

「抗体陽性反応が高い抗体に対応するワクチン程,治療効果が高い」という仮定に基づいた方法です.実は,この方法が最適解であるかどうかは正確にはわかっていません.

(引用:http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/cvc/F/info/explanation.html)

ITK-1で使用されたペプチドワクチン

ITK-1はPhase 3の結果待ちの段階です.この試験では,HLA-A24陽性の患者を対象としており,久留米大が保有するHLA-A24ワクチン候補14種類から4種類を選択して投与します.

4種のペプチドワクチンの選び方は他にもある!

これまでは抗体陽性反応の高い順に4種類を選択していましたが,もちろん別の選択方法もあります.例えば,ランダムに4種類を選ぶこともできますが,これは妥当性が示せないため受け入れられません.

もっと合理的な方法があります.HLA-A24候補ワクチンは14種類ありますが,そのうち抗体陽性反応の値がある値を超えたワクチン候補が10種類あったとします.この10種類のワクチンと治療効果の関係がわかっていれば,治療効果が高いと予測される4種類を選択することができます.実は,この方法について,2017年11月2日に発表がありました!

以下,久留米大学がんワクチンセンターの発表からの引用です.久留米大学がんワクチンセンターに蓄積された治療データから,治療法がさらに改善される可能性がでてきました.

当センターでは、これまで8年間、多くの患者さんのご協力を戴き、臨床試験として個別化ペプチドワクチン投与を行い、3000例を超える方々のご参加がございました。そこで癌腫別の、投与させてもらった個別ペプチドと臨床効果(全生存期間)との相関関係を検討しました

その結果、がん腫毎に臨床効果(全生存期間)への貢献度合いの高いペプチドが存在することが判明しました。それらの貢献ペプチド群はがん腫ごとに若干異なることも判明してきました。そのために、個別化ペプチドワクチンのより高い臨床効果を目指して、これまでの「抗体陽性の高い順に最大4種類選ぶテーラーメイドペプチドワクチン臨床試験」を、「抗体陽性のペプチドのうち臨床効果と正相関をしめすペプチドを優先して最大4種類選ぶテーラーメイドペプチドワクチン臨床試験」に変更いたしました。

(引用:http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/cvc/F/20171102.pdf)

9種の悪性腫瘍患者に対するテーラーメイドがんペプチドワクチン療法第Ⅱ相試験

↑ この試験名で新規のワクチン選択方法に関する臨床試験が既に開始されています!

対象は,以下の9つのがんです.MCP-1低値の患者(血液中MCP-1が低い患者は,がんワクチンにより治療効果が得られにくい)は除外されており,これまで実施してきた臨床試験の結果を踏襲できています.

  • 前立腺がん
  • 尿路上皮がん
  • 乳がん
  • 肺がん
  • 卵巣がん
  • 胃がん
  • 大腸がん
  • 肝臓がん
  • 膵臓がん

主要評価項目は,「1Kur終了時特異的免疫能の変化 」となっています.1クール終了時の免疫能と臨床効果が相関していると考えているのでしょう.つまり,1クール終了時の免疫能が高くなっていれば,生存時間も長くなると仮定しています.Phase 2なので,新のエンドポイントである生存時間ではなく,サロゲートエンドポイントと考えている1クール終了時の免疫能を主要評価項目と設定したわけです.

目標症例数は,900例です.

解析終了予定は2023年3月末に設定されています.かなり先ですが,患者の登録が順調に進めば早まると思います.非盲検試験なので,効果が高そうであれば噂で広まって患者登録も加速化されるはずです,

最後に

このPhase 2試験の結果から今後開発を進める癌腫を絞るはずです.いくつ残るか楽しみですね.ITK-1の対象は前立腺癌だけなので,今後は,この試験に注目したいと思います.新しい治療法の有用性が示された場合,Phase 3からはBrightPathなどの企業が実施することになると思います.

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